乃木坂浪漫 ep84 12.08.23 市來玲奈 × 坂口安吾『日本文化私観』


乃木坂浪漫 ep84 12.08.23 市來玲奈
开场白:星野みなみ
朗读作品:坂口安吾『日本文化私観』

身为无赖派的作家坂口安吾在战时发表的随笔作品。

伝統とは何か? 国民性とは何か? 日本人には必然の性格があって、どうしても和服を発明し、それを着なければならないような決定的な素因があるのだろうか。
昔日本に行われていたことが、昔行われていたために、日本本来のものだということは成立たない。外国に於て行われ、日本には行われていなかった習慣が、実は日本人に最もふさわしいことも有り得るし、日本に於て行われて、外国には行われなかった習慣が、実は外国人にふさわしいことも有り得るのだ。
キモノとは何ぞや? 洋服との交流が千年ばかり遅かっただけだ。そうして、限られた手法以外に、新らたな発明を暗示する別の手法が与えられなかっただけである。日本人の貧弱な体躯が特にキモノを生みだしたのではない。日本人にはキモノのみが美しいわけでもない。外国の恰幅(かっぷく)のよい男達の和服姿が、我々よりも立派に見えるに極っている。
新らしい交通機関も必要だし、エレベーターも必要だ。伝統の美だの日本本来の姿などというものよりも、より便利な生活が必要なのである。京都の寺や奈良の仏像が全滅しても困らないが、電車が動かなくては困るのだ。
日本人の生活が健康でありさえすれば、日本そのものが健康だ。彎曲した短い足にズボンをはき、洋服をきて、チョコチョコ歩き、ダンスを踊り、畳をすてて、安物の椅子テーブルにふんぞり返って気取っている。それが欧米人の眼から見て滑稽千万であることと、我々自身がその便利に満足していることの間には、全然つながりが無いのである。彼等が我々を憐れみ笑う立場と、我々が生活しつつある立場には、根柢的に相違がある。我々の生活が正当な要求にもとづく限りは、彼等の憫笑(びんしょう)が甚だ浅薄でしかないのである。